恋のためには死ねないけれど


「僕は、君のためには死ねない」
「なんなんすかいきなり。っつーかそんなの、こっちから願い下げですけど」
「……そこはちょっと寂しそうにするところじゃないか?」
「や、だってそんなの、とっくに分かりきってることですし。むしろ今更、なんでそんな話を?」
「確かジャパンだったか。愛してるを、死んでもいいわって訳したって話があるらしいんだ」
「へえ、なんとも感傷的ですね」
「その話を聞いて僕も、君のために死んでもいいかって考えてみたんだ。そしたら死ねなかった。想像の中でも。結構頑張ったんだけど、どうしても無理だった」
「でしょうね」
「だって俺が死んだらライブラはどうなる。揃いも揃って腹芸の出来ないやつばっかりだし。なんであいつら、あんなに素直なんだよ! 一応秘密結社なのに!」
「別に出来ない訳じゃねえと思いますけど、スティーブンさんレベルを求めると厳しいっすね。っつーか、スティーブンさんがそういう人、好きだからってのもあるでしょ。いかにも腹になんか抱えてますって腹芸のスペシャリストが来ても、絶対受け入れないくせに」
「えー、僕のせい? 確かに、信用できないやつは事務所には入れたくないし、こっそり追い出すか他のとこに回すけど。いやでも、ある程度は妥協してるんだぜ、これでも」
「ふーん」
「なんだその目は。……そりゃクラウスはいいやつだしさ、傾倒してるやつもいっぱいいるけどさあ。底意地の悪い人の弱み探る事が生きがいみたいなやつ、どこにでもいるんだよなあ。俺がいなくなったら、遅かれ早かれそういうやつらの手が伸びてくる。まあギルベルトさんがいるから、ギリギリ最悪は回避出来るだろうけど。一応いつ死んでもいいように引き継ぎの手配もしてるし。あああでもやっぱり心配すぎて死ねない」
「んな簡単に死なれたら困りますよ。生きててください」
「うん、生きる。だから君のためには死ねない。ごめんね」
「だーかーらー、謝る事でもねえし。俺だってあなたのためになんて死にやしませんよ」
「うん、それも分かってるけど。恋人にそう言い切られちゃうのも、複雑だなあ」
「しゃーないでしょ。俺もアンタも譲れないもんがあるって分かりきってる事ですし。別に、恋人だからって常に心の真ん中に置いて優先させなきゃいけないって訳じゃねえし」
「君のそれ、僕としては同感だけど。所々ひどいよね」
「そこは似てて良かったですね、俺もアンタも」
「じゃなきゃ、とっくにフラれてるさ」
「俺が?」
「いやあ、僕が」
「ああ、約束破っちゃうから?」
「それもあるけど……もしかしてこの間の、まだ怒ってる?」
「約束破られた事は別に。スティーブンさんが忙しいの、分かってますし。でも忙しいくせに、無理矢理約束取り付けようとすんのは、ムカつきますけど。余計に無理するくせに」
「だって、君との時間が欲しかったから」
「うわあ、ズルイ。そんな風に言われたら、俺の方がひどいやつみたい!」
「はは、十分ヒドい男だよ君は」
「アンタに言われたくねえ……まあ、ヒドい男なんで、アンタのためにゃ死んでやりません。ええ、意地でも生きてやりますよ」
「うん、そうしてくれよ。そうしたら僕も、心置き無く仕事が出来る」


「でもアンタってそんな事言ってるくせに、意外と、その辺の小さな女の子庇って死にそうですよね。こう、すごくベタに」
「それはどう考えても君だろう。後先考えずに突っ込んで行って」
「まあ、見かけたら考える前に体、動いちゃいそうですけど。死にませんよ、俺は」
「僕だって死なないけど」
「どうかなあ、スティーブンさん、意外と抜けてるし」
「君にだけは言われたくない」
「そもそも、最低でもミシェーラの子供の結婚式で泣くまで、死ぬつもりないですし、俺は。それまでには必ずミシェーラの眼も取り返しますし。死んでる場合じゃねえっす」
「あーわかる僕もクラウスの子供にスティーブおじさんって呼ばれたい。確かに死んでる場合じゃないな」
「でしょう」


「……例えば、三日後に死ぬ呪いをかけられたとする。絶対解除できないタイプのやつ」
「あ、まだ続けるんすかそれ。いい感じにミシェーラの子供とクラウスさんの子供見るまで死ねねぇなってまとまってませんでした、今。なのにまだ続けるんすか、これ」
「それはそれ、これはこれ。一応まだ続きがあったから、聞いてくれよ。で、さすがにそれだったら、最後の一日くらい、君のために生きられるかなあなんて思ったんだけど」
「無理だったんでしょう、分かります」
「……正解だけど、そんなあっさり納得されるの、面白くないなあ」
「だって最後の最後まで、働いてそうですもん。呪われたこと誰にも話さないまんま。うわームカつく。ムカつくから、スティーブンさんがいつも以上にバリバリ働き出したら、身体の隅々までこの眼で見てチェックして呪い見つけて、あっさりバラしちゃいますね、クラウスさんに」
「えええ、そこは黙っといてくれないの?」
「駄目ですー、それにクラウスさんならたかだか死の呪いくらい、どうにかしてくれますよ。だってクラウスさんだし」
「確かに、クラウスだもんな。すごい説得力だ」
「だからスティーブンさんは死ねませんでしたー残念!」
「……せっかくいろいろ考えたのになあ。三日間のうちにやること」
「たとえば?」
「仕事の引き継ぎとかもそうだけど、どうせ死ぬならさあ、目障りで鬱陶しいことこの上ないくせに下手に手出したら面倒なやつら、まとめて道連れにしてやろうと思って。ハハハ、地獄まで引きずり込んでやる」
「うわあバイオレンス。でもエスメラルダ式使ったら、スティーブンさんの仕業ってばれますよ。そしたら残されたライブラが、きっと大変な事に。いくらスティーブンさんが根回ししてライブラと関係ない事にしてても、底意地の悪い人達は絶対つついてきますよね。ああーただでさえ親友を失って悲しみに打ちひしがれるクラウスさんに更なる追い打ちがぁー」
「なんだそのわざとらしい棒読み。でも、確かにそうだな。よし、パトリックに武器の手配を頼もう。変装もする」
「下手な変装じゃ、ばれますよ。アンタみたいに足の長い人、そうそういないっすもん。顔だけじゃなく、身体もちゃんと隠さなきゃ。たとえばポリスーツとか」
「ポリスーツ? あれはちょっとな」
「えーいいじゃないですか、ポリスーツ。かっけーっすよ。改造して、変形もさせましょうよ、三段階くらい。ついでに巨大化もやっちゃいましょうよ」
「なに君、ああいうの好きなの?」
「ロマンじゃないですか、パワードスーツ! こう、胸のとこがぱかっと開いて多連装のロケットランチャーが飛び出てくるようなやつ。かっこよくないすか?」
「分からないでもないけどさあ。でもそれならあっちの方がよくない? ほら、こないだK・Kが貸してくれた戦隊ヒーローみたいなの」
「あーそれもいいっすね! 変身する時にいちいちポーズとって。でもあれ、結構体の線出ちゃいません? 正体、ばれちゃいません? スティーブンさんって、足の長さだけじゃなくてスタイルもいいし。顔隠しても体型がもう、自己主張激しいっつーか。だから、やっぱポリスーツみたいなやつの方が変装向きですよ」
「……君、実はかなり好きだろう、ポリスーツ」
「へへ、バレました? こう、機械! ロボット! って感じなのがいいんすよねえ。スタイリッシュじゃないのが逆に燃えるっていうか。あ、あれもつけましょうレーザーソード!」
「レーザーソードってあれだろ、要するに剣だろ。効率悪くない?」
「効率とかこの際どうでもいいんすよ! 大事なのはロマンですよロマン! 分かってないなあ」
「いやだって、効率の方が大事だろう。少なくとも四つ、いや五つだな。潰しておきたい組織の数。ついでに排除しておきたい個人も、まだ何人かいるし。いちいち剣で一対一の戦いなんて挑んでられないよ」
「じゃあ、なんかすげー機能つけましょう、レーザーソードに。めっちゃ伸びるとか。爆発するとか、そういうの。一振りで辺り一面更地になっちゃうような」
「なら爆弾か銃でいいだろう」
「よくねえっすよ。スティーブン23号にレーザーソードは必需品です。今決めました」
「なんだそのネーミングは。どうせつけるならもっとカッコいいので頼む。そして22号まではどこ行った」
「えーじゃあスティーブン23号(仮)にしときますね。名前は単純な方がいいんすよ、あんまカッコつけない方が逆にカッコいいんです、こういうのは」
「分かった、名前は僕が自分で考える。君には期待しない。それで、なんで23号なんだ」
「22号までは地下で眠ってます。エネルギーがすぐ切れちゃったり、命令に従わなかったり、いろいろ問題があって。でも一応動くので念のために保管されてるんです。培養液の中に1号から22号ずらーっとスティーブンさんがいっぱい。壮観っすね」
「待て待て待て、それじゃもう、パワードスーツどころの話じゃなくなってるぞ。なんなの、クローン?」
「どっちかっつーとアンドロイドのがいいっすね。じゃあ培養液じゃなくて、地下倉庫に格納! で、何かのきっかけでわらわらと地上に這い出てきた暴走状態のスティーブン1号から22号のせいで、街は大混乱! ワオ、大変ですね!」
「ちなみに僕の本体はどれなの? もう死んだあと?」
「いいえ、地下の一番奥で眠ってます。ふかふかのベッドでぐっすり」
「死んでないのかよ! なら起きて仕事するよ!」
「それは16号と18号が頑張ってくれますから、スティーブンさんの本体は寝てていいっすよ。事務能力と、交渉力に特化してるタイプなんで」
「なにそれちょっとほしい。いいなあ、仕事してくれるロボット。まあ僕もやるけど」
「えーせっかく作ったんだから、そこは任せてやってくださいよ。頑張ったんですから、パトリックさん辺りが。ギルベルトさん監修の元」
「……その二人の名前出すと、妙にリアリティがあるからやめてくれ」
「じゃあ俺が頑張ります、ザップさんとツェッドさんと」
「よかった、一気に信憑性がなくなった」
「ひでえ! あ、でもスティーブン号がいっぱいいたら、あれも出来そうですね、密室殺人的な。ミステリーの。アリバイ作りにはスティーブン20号がオススメです」
「なんで?」
「女性の相手が得意だから。その辺で女の人口説いて、ばっちり目撃者作ってくれます」
「おいレオナルド、君なあ……でも、そうだな。個人を狙うにはそっちの方がいいかもしれない」
「でもやっぱナシですね。ああいうトリックにそういう飛び道具出しちゃうと一気に冷めるし。ここはやっぱり、スティーブンさん一人で頑張ってもらいましょう。密室トリック」
「ええ、せっかく作ったのに? 任せてやらないの?」
「任せてやりません。だってミステリーでトリックのネタ晴らしを引っ張りに引っ張って、最後の最後、実は全部アンドロイドの仕業でしたーとか言われたら、萎えません? それ反則だろ、みたいな」
「意外とそういうの、嫌いじゃないけどな。っていうか君のその、神々の義眼使えばアリバイ作りなんて簡単じゃないか?」
「それもダメですー、飛び道具禁止ですー。でも仕方ないから、協力者にはなってあげますよ。こう、動揺を滲ませながら、あの人は昨日一晩中俺と愛し合ってました、みたいな白々しい証言する役で」
「君、いまさらそれくらいで動揺なんてしないだろう。なんなの、僕を陥れたいの?」
「やだなあ、お約束ですよお約束。それで怪しんだ探偵が、レオナルドを張り込んでスティーブンに揺さぶりをかける流れですね」
「それ、最終的に捕まる流れじゃないか。完全犯罪の方で頼む」
「……俺、ミステリーは犯人逃げ切りより、きっちり捕まるやつの方が好きなんです」
「くそっ、とんだ裏切り者めっ! もういい、俺一人で頑張る!」
「じゃあ俺は探偵役になろうかな」
「はん、君を出し抜くくらい、朝飯前だ」
「ちなみに、探偵レオナルドはガンガン義眼を使います。事件解決のためなので、仕方ないですね」
「それは反則だって言ったばかりじゃないか! 卑怯だぞ!」
「最近は探偵にもいろいろ特殊能力があるもんなんです、キャラ付けのために」
「とんだ駄作だな」
「ですね、頑張っても二作目で打ち切りパターンですわ」
「それでいいのか探偵レオナルド」
「だって、やっぱミステリーとしては微妙っすもん。子供向けならそういうファンタジーミステリーでもいけそうですけど、そしたら犯人役にスティーブンさんってなんか、えぐいし」
「えぐいってなんだよえぐいって。猟奇殺人犯じゃないんだから。むしろ被害者はみんな後ろ暗い事があるやつばっかりだって分かったら、ダークヒーローでいけそうじゃないか?」
「ああ、その路線ですか。うわあ、怪人スティーブン、人気出そう。そのまま映画化の流れ、ありますね。活動資金がっぽがぽっすわ」
「甘いなあ。映画って撮るのに金かかるんだぞ。稼ぐ前にかけた費用分ちゃんと回収できるかすら、怪しいもんだぜ」
「怪人スティーブンをスティーブンさんがやって、探偵をザップさんがやれば結構うけそうじゃないですか? 二人とも、顔だけはいいですし。写真売り捌けばいいっすよ」
「顔だけってなんだよ顔だけって」
「間違えました、スタイルもいいですね」
「……ひどい」
「え、ちょっと本気でへこまないでくださいよめんどくさい」
「ますますひどいな! っていうか、映画撮ってる時間なんてないからな! 俺、死ぬんだし! 死ななくても時間なんてないし!」
「あ、そういう設定でしたね。忘れてた」
「もう随分前から脱線してるけどな。なんだよスティーブン23号って」
「そこはまだギリギリ、脱線してませんって。いけますよ、スティーブンと23体のアンドロイドたち」
「それはそれで映画のタイトルにありそうだな」
「ですね。なんならスティーブンさんの役も、3号が代役で頑張るんで、時間なくても大丈夫ですよ」
「全然大丈夫じゃない、そもそもたった三日でそんなもの作れないだろ」
「そうっすねえ、それも俺とザップさんとツェッドさん制作ですし。段ボールで我慢してください。色紙でカラフルに仕上げたげますね」
「なにそれ絶対かっこわるい」
「失礼な。ポリスーツに近づけるよう頑張ります」
「だからポリスーツは僕の好みじゃないって」
「23体のアンドロイドは、そうですね、折り紙で。前に教えてもらったんです、ツェッドさんに。あれで、お供23体作ってあげます」
「うん、いらない」
「そんな事言わずに。レーザーソードも作ってあげますね、新聞紙で……ふふっ」
「あ、笑ったな! ほら君だってダサいって思ってるんじゃないか!」
「段ボールかぶって折り紙のお供引き連れて新聞紙の剣持ってるスティーブンさん……ぶふふっ、やべえちょう笑える」
「絶対着ないからな、そんなの。蹴り潰して燃やしてやる」
「きゃー助けてボックスマン! 怪人スティーブンが暴れてるの!」
「ボックスマンってまさか、その段ボールヒーローの事か。弱そうな事この上ないな」
「大丈夫です、スティーブンさんがワガママ言ったから、代わりに中にはクラウスさんに入ってもらいます。だからすげー強いっす」
「やめろよ! あいつ意外とそういうの好きなんだからな! ノリノリで被ってくれるよ!」
「見て! 怪人スティーブンが動揺してるわ! さすがボックスマン! 素敵!」
「卑怯だぞ……分かった、なら僕にだって考えがある」
「ほほう、このボックスマンに勝てる秘策があるとでも?」
「和解を申し入れる。それでボックスマンの味方につく」
「騙されちゃだめ! ボックスマン! 怪人スティーブンの罠よ!」
「俺がクラウスを罠にかける訳がないだろう! 味方に寝返った暁にはまずはその、クソダサいコスチュームの変更に取り掛かってやる。戦隊ヒーローのレッドみたいなやつにしてやる」
「……アンタも、実はかなり好きなんじゃないですか、戦隊ヒーロー。今度また、K・Kさんに借ります? ケイン君オススメのやつ」
「……うん、借りる」
「まあクラウスさんなら、身体のラインが出るコスチュームでも似合いますよね。むしろかっけーし」
「その言い方じゃ、僕には似合わないって言ってるように聞こえるけど?」
「似合うでしょうけど、アンタは正体バレちゃダメでしょ」
「クラウスはいいとでも?」
「だってクラウスさんが正体隠して動かなきゃなんねーこと、するわきゃないじゃないっすか」
「それはそうだけどな! むしろ普段からもうちょっと隠してほしいけど、いろいろと! なんだろう、釈然としない……」
「えー元々はアンタが言い出したんすよ、この話。闇討ちしたいっつーから考えたのに。すげー頑張ったのに」
「そうだけどさあ。うーん、納得がいかないから、明日は昼まで起きないぞ。目が覚めても、ずっとベッドに引きこもってやる。君も付き合え」
「はいはい。でもトイレタイムと給水タイムは別ですよ」
「仕方ないなあ、タイムの合図はキスだ。なら許そう」
「いいっすよ。可愛いスティーブ坊やのおでこに、チューしたげますね」
「そこは唇だろう」
「でも、おでこにされるのも結構好きでしょ」
「そりゃ嫌いじゃないさ。ああもう、分かったよ、好きなとこにしてくれ」
「嬉しいくせにー」
「……僕がタイムを申請する時は、全力でお見舞してやるから覚悟しろよ」
「やだ怖い助けてボックスマン!」
「まだそれ、引っ張るのか。夢に出てきそうだよ、ボックスマン」
「楽しそうじゃないですか、良かったですね。きっと今日は、怖い夢なんて見ませんよ。悪魔がやってきても、クラウスさんが追っ払ってくれますし」
「子供じゃないんだから……でも、そうだな。段ボール被ったクラウスの後ろで、君たちがガキみたいにはしゃいでたら、笑うしかないだろ、そんなの」
「ふふふ、良かったですね。じゃあ、そろそろ寝ましょうか」
「……君、もしかして、分かってやってた?」
「え? スティーブンさんがまたバカみたいに落ち込んでくだんねーこと考えてたこと? それとも、眠る前にいろいろ考えちゃいそうで、俺と話して気を紛らわそうとしてたこと?」
「うわあ、それ言っちゃうのかよ。大当たりだよ、くそっ。……君ってば、ほんとタチ悪くなったよなあ」
「あなたのおかげでね。さあさあ、いい子は眠る時間ですよー」
「はあ、分かったよ。……ありがとう、レオ、おやすみ」
「こちらこそ、楽しかったですよ。おやすみなさい」


「あ、そうだ。もう一つ、あったんだ。君に、話したいこと」
「……なんすか、もう。今、半分寝てたのに」

「僕は君のために死ねないけど。でも」

「……君のことが好きだよ、レオナルド。愛してる、僕なりに」
「ふはっ、何かと思えば。……勿論、俺もですよ、ダーリン、ふふっ。大好きです。愛してますよ、俺なりに」

だから。
おやすみ、ベイビー。
今日のあなたを包む夢が、優しいものでありますように。