※薄い排泄描写あり
狩りの作法
見誤っていた。
侮っていた。
勘違いしていた。
思い上がっていた。
知り合ってからの時間はそれほど経ってはいないけれど、ライブラの任務でも私生活でも、気づけばザップと共に行動する時間が多くなっていた。
それに伴って、別に知りたくもないのにザップ・レンフロという人間についてのデータがレオナルドの中に積み重なってゆく。
彼がどういう人間かと問われればすぐにぱっといくつかのワードが思い浮かぶくらいには、おおよその事は知っている。
女好きで下半身がだらしなくて、金遣いが荒い。というか、おそらく経済観念というものが存在していない。
給料は下手をすれば二十五分で使い切り、長く保ってもせいぜい一日が限度。
そのくせギャンブルや酒、ドラッグが大好きで、金が尽きても自重するどころか、誰かからせびった金を惜しげもなく注ぎ込む。レオナルドも、度重なるたかりの被害者だ。
きっと金の事を、何か楽しい事と引き換えに出来る道具程度にしか思ってないに違いない。なきゃないでその辺から適当に調達してくるか、欲しいものをそのまま手にすればいいやと考えてそうな節がある。ソニックの方がまだ、人間の経済活動を理解してるのではとレオナルドは密かに思っている。
こわな感じで、ざっと思いついたものを並べるだけでも、度し難い人間のクズという表現がぴったり当てはまる、クズの中のクズだ。
それでもザップという男は、なぜか女にはよくモテる。経済力がゼロどころか、マイナスに振り切ってるのに、複数の愛人を抱えている。正確に言えば、彼女たちによって養われている。
しょっちゅう愛人絡みのトラブルに見舞われて、時に刺されたり呪われたりしてるくせに、愛人が途切れた事はない。
知り合ったばかりの頃は、その不可解な状況がレオナルドにはさっぱり理解出来なかったけれど、共に過ごすうち、少しだけその理由も分かったような気がする。
普段は本当にどうしようもないし、大半はクズ成分で構成されているものの、案外面倒見はいいし、仲間がやられたらやり返す程度の情も持ち合わせている。
口は悪いけれどなんとなく憎めない部分もあって、心底嫌いにはなれない。理不尽のとばっちりを受けたとしても、最終的にはザップ・レンフロとはそういうものだと諦め交じりに納得してしまう。
それに、単純に、強い。異界存在や血界の眷属との闘いにおいて、ひどく頼もしく思えるくらいには。
例え絶望的な状況に陥ってもその姿を認めれば、何の根拠もなくとも大丈夫だと思ってしまうし、現に何度も危ないところを助けられてきた。
つまるところ、そういう部分ではレオナルドはザップの事をこの上なく信頼している。
だからきっと、ザップの愛人たちも、そういう部分に惹かれたのだろうと、勝手に納得していた。
普段はクズさで埋もれて見えにくいけれど、たまにちらりと見える、嫌いになれないところ。レオナルドからしても、ちょっとかっこいいと思ってしまうようなところ。或いは仕方ないなあと許容してしまう、憎めないところ。
レオナルドの中のザップという人間はおおむねそういうもので、それが間違っているとは思っていなかった。
それどころか、ザップの事をほぼ全て、知っている気になっていた。
もしかしたら、ザップの愛人と呼ばれる彼女たちよりも、もっと。
ダメなところもいいところも含めて全部、何もかも、なんて。
勝手にそう、思い込んでいた。
それなのに。
「サイッコーに気持ちよくしてやんよ、なあ、レオ?」
殺風景な部屋の真ん中に、ぽつんと置かれたキングサイズのベッドの上。
レオナルドの上に覆いかぶさり、見せつけるようにペロリと唇を舐めて、不敵に笑ったザップは。
一度も見たことの、ない。
レオナルドの、知らない顔をしていた。
事の発端は、世界最大の個人であるギガ・ギガフトマシフの移動の最中、うっかりとその足がレオナルドの住むアパートに掠った事にある。
アパートそのものは無事だったものの、ピンポイントでレオナルドの部屋だけが潰され、事前の賃貸契約により、何の保証もなくあっさりと放り出された。
「ギガ・ギガフトマシフ氏により借主が被った損害においては、貸主は一切の責任を負わないものとする」。
長ったらしい契約書の隅に小さな文字で、そんな一文が書かれてあった事は知っていたけれど、大して気にはしていなかった。だってまさか、自分がそれに当て嵌まる被害を受ける日が来るなんて、思いもしていなかったから。
非常に不運で理不尽ではあるけれど、ここ、ヘルサレムズ・ロットではさして珍しい事でもない。
初めてならまだしも、既に数度、似たような理不尽の結果住む家を追い出された経験のあったレオナルドは、多少嘆きはしたもののすぐさま気持ちを切り替えて、無事だった荷物を手早く纏め、ひとまずライブラの事務所に転がりこんだ。嘆いていたって事が好転する訳じゃないのだ。
レオナルドが住処を失い事務所に転がりこむのも毎回の事だったから、さほど驚かれはしなかった。
スティーブンについてなかったな、とポンと肩を叩かれればそれで少し、最悪だった気分が持ち直す。あまり大仰に心配されるのは困るけれど、かといって何も言われないのはたぶん、寂しい。その辺の塩梅がうまいなあ、と上司の気遣いにある意味では感心しつつ、行きがけのファーストフードで手にした情報誌をぱらぱらめくって目ぼしい物件を探す。
安さが第一だけれど、交通の便や周囲の平均生存率もある程度は考慮しなければいけない。あまりに安すぎる場所は当然危険度が高いから、さすがにレオナルドが暮らしてゆくのは難しい。
「ここ、結構いいかも」
「そこはおススメ出来ないな。近々、治安が一気に悪化しそうだからね」
「……やめときます。……あ、ここなんて!」
「レオ君、そこはバイト先や事務所までの道が危ないですよ」
「うわあ、ほんとっすね……んー、いいのないなあ」
事務所のソファに座ってあれやこれやといくつか目についた物件をピックアップしていったものの、休憩がてら覗き込んできたスティーブンににっこりと笑って有り難くも恐ろしい助言を頂いたり、一緒に情報誌を見ていたツェッドに穏やかにダメ出しをされたりしているうち、とうとうめぼしい候補が無くなってしまった。
「あー、マジどうしよう」
一応、しばらくの間事務所に寝泊まりする許可は貰えたけれど、その言葉に甘えていつまでも居つく訳にもいかない。それほど大勢が出入りする訳でもないものの、不定期に人の気配が増えたり減ったりする場所では、完全にだらけた姿で過ごす訳にもいかず、レオナルドとしても落ち着かない。
どうしよう、ともう一度、今度は声に出さず胸の中で呟いたところで、事務所にザップがやってきた。
一旦スティーブンと別室に消えてから、しばらくして戻ってきたザップは、情報誌を覗いてうんうんと悩むレオナルドを見るとにやあ、と楽しそうに笑った。
「どーした陰毛頭、まーた追い出されたのか」
「追い出されたというか、潰されたというか。ほら、ギガ・ギガフトマシフ伯爵のあれです」
「へー、ほー、運のないやっちゃのー」
過剰な心配は困るけれど、にやにやとカンに触る笑い方で茶化されるのは若干腹立たしい。
むっと唇を曲げたレオナルドは、頭の中から努めてザップの存在を追い出して、知らぬふりでもう一度、最初のページから情報誌を見直してゆく。
そうしたら。
「オウオウ陰毛君、親切で優しくてカッコいいザップ様が泊めてやってもいいぞ? 『偉大なるザップ様、何でもしますからどうか一晩の宿をお恵みください』って床に這いつくばってお願いしたらな!」
「うわあ……サイテーだ……」
突然、ザップが奇妙な事を言い出したから、ついつい驚いてそちらを向いてしまった。
すぐさまなんともザップらしい、困ったレオナルドの足元を見まくったような事を言い出したので、思い切り顔を歪めてわざとらしくため息をついてみせて、邪魔しないでくださいとそっぽを向く。
しかしてっきり、レオナルドをからかうだけのためにそんな事を言い出したのかと思ったのに、意外としつこくザップが言葉を重ねて誘ってくる。
「ったくわがままなやっちゃのー。しゃーねえから今ならタダで泊めてやるわ」
「やですよ、だってアンタの家ってどうせ、愛人さんのとこか売春宿か、ヤリ部屋みたいなとこでしょ? 落ち着いて寝られる気がしねー」
「ばーか何図々しいこといってんだオメー。童貞をんなとこ泊まらせてやっかよ。俺んちだよ俺んち。女んとこに住みたいなんざ百万年はえーわ」
「ザップさんちってあれですか、ゴミ捨て場とかそういうオチですか」
「あああん? 泣かすぞクソガキが」
夜の街で酔いつぶれたザップを回収して家に送り届けた事は一度や二度ではないけれど、そういう時に指定されるのは決まって、愛人の家かそれに準ずる場所だった。
だからレオナルドは、ザップが本来の意味での自分のホームを持っているとは、ちっとも思っていない。
ところがザップの言い分を聞けばまるで、愛人の家でもヤリ部屋でもない、ちゃんとした家を持っているかのような口ぶりだった。
口では端から嘘と決めつけて、適当にあしらいつつ、レオナルドの中の好奇心がむくりと顔をもたげる。
興味を惹かれたのは何も、レオナルドだけではなかったらしい。
「なんだザップ、お前、家あったのか」
「あー、そうっすね。殆ど使ってねーけど、ありますよ」
「ふうん、場所は?」
「言わねっすよ……あー、っつっても、レオ連れてったらGPSでバレんのか。ま、それで確認してくださいよ」
「いいのか?」
「しゃーねえっしょ」
自然にするりと会話に入ってきたスティーブンからの質問に、ザップは一瞬げっと顔を歪めたけれど、すぐに諦めたのか比較的素直に答えてゆく。
レオナルドに話しているだけならからかっているだけの可能性が捨てきれなかったけれど、スティーブンにまで下手に嘘をつくとは思えない。
どうやら本当に、ザップには家があるらしい。そしてレオナルドは、今まさに、そこを訪ねる権利を手にしている。
それが分かってしまえば、その権利をむざむざ放棄するのは難しかった。
だって、気になってしまう。夜ごと違う女の家をふらふらと渡り歩く男の拠点がどんな場所にあるか、どんな部屋に住んでいるのか。
「いいんですか、本当に」
行っちゃいますよ、と小さな声で確認をとれば、得意げに胸をそらせたザップに感謝しろよと乱暴にバンバンと背中を叩かれた。
その表情はいたく機嫌がよさそうで、やっぱり気が変わったと今更撤回されそうな雰囲気もない。
「じゃ、そういことで。俺とレオ、明日は出てこなくていいっすよね? 今、急ぎの案件もねえし。コイツのモンとか買いにいかなきゃなんねーし」
「……ザップさん、なんか変なものでも食べました? 親切すぎて怖いんですけど」
レオナルドが潰れた部屋から持ち出せたのは、当面の金と仕送り用の通帳と、最低限の着替えが少しだけ。
だから部屋を借りるにしろどこかに泊めてもらうにしろ、生活のために改めて買い足さねばならないものは少なくない。しばらくはバイトも増やさなければと思っていたけれど、まさかその辺の事情をザップが汲んでくれるとは思ってもみなかった。
普通に見えるけれど実は、変なクスリでもキメてるんじゃないだろうかと疑いの目を向けて見せれば、ザップは不服そうに唇を尖らせたけれど、了承したスティーブンが懐から取り出した財布から数枚の金を取り出して渡すと、あっさりと機嫌を直し、レオナルドを引きずってさっさと事務所から出て行こうとする。
「ちょ、ザップさん! あの、金! ちゃんと返しますんで!」
「いいよいいよ、不運な少年への見舞金みたいなもんだから。その代わり、ザップに使わせないでくれよ」
「すげー助かりますけど! ええと、しばらく借ります! ありがとうございます!」
恐縮する間もなく、ザップによって事務所から引きずり出されたレオナルドは、扉が閉まる直前。
まるで捨て台詞のようにスティーブンへ向けて、感謝の言葉を大声で怒鳴って放り込んだ。
ランブレッタの後ろにレオナルドを縛りつけ、鼻歌交じりに出発したザップは、寄り道して手にした金を空にする事無く、真っ直ぐにホームと称する場所へと向かった。
真っ直ぐに、とはいえ、何度か同じ道を通ったり、明らかに回り道はしていたから、それなりに拠点がバレないように配慮はしているのだろう。
途中まではザップがその辺の賭博場へ飛び込んで金を使い込むのではと、ハラハラしつつ行き先を見守っていたレオナルドも、次第に秘密基地に向かっているような高揚感を覚え、胸がわくわくと高鳴ってゆく。
細い脇道を抜けて大通りをぐるぐると周回し、同じ建物を数度目にしたあとたどり着いたのは、高級住宅街の集まる地区からほど近い、比較的治安のよい場所の路地の奥にある古びたアパートメント。
歴史を感じるその外観とは裏腹に、中身は比較的新しくて小奇麗なつくりをしていた。
入口の共用玄関は生体認証で管理されていて、ザップが扉の前に立つとすっと音もなく扉が横に移動して開く。
せいぜいレオナルドの住んでいたボロアパートより、多少ましくらいの場所に連れてこられると思っていたから、その予想外の厳重さに呆気にとられ、当たり前のように中に入っていくザップの後ろを、おっかなびっくりついてゆく。
エレベーターで四階まで上がって、廊下を真っ直ぐいった突き当りの、角部屋。
そこも共通玄関と同じように生体認証でクリアしたザップのあとを続いて中に入ったレオナルドは、その部屋の中身に思わず唸り声をあげる。
「なんでアンタ、こんないいとこ住んでんすか……不公平すぎてムカつくんすけど」
「昔の戦利品。ギャンブルでアホみてーに当たった事あってな、胴元が金払えねーっつーからシメていろいろパチッたんだわ。そいつらもうみんないねーし、変な紐はついてねえぜ」
家族で住むには少し狭いけれど、一人で住むなら十分な広さ。玄関から見えるだけでも、レオナルドの住んでいた部屋が三つは入りそうだった。
殆ど物が置かれてないせいか余計に広く見えて、壁紙や床も染み一つない綺麗なものだった。天井だってやたらと高い。
レオナルドの元の部屋とは天と地ほどの差があるそこに、つい愚痴めいた言葉を呟けば、返ってきたザップの言葉に少しだけ納得する。
ザップが自分で稼いで借りるなり買ったなりしたと言われたら信じられないけれど、ギャンブルのカタと言われればそれはありそうだと思えてしまう。ただでさえ借金まみれなのだから、売り払って換金してしまえばそこそこの金になるのにとは思ったけれど、そんなマメな男であればあんなにツケや借金を作らないだろう。
玄関を抜けてすぐ、その辺に靴を脱いで裸足でぺたぺたと歩き始めたザップに倣って、レオナルドも靴を脱いで脇に置いておく。
だだっぴろいリビングには、大きなソファーとローテーブル、床に直接置かれたテレビがあるだけ。
その向こうに見えるキッチンには当然使われた形跡なんてなく、生活感の欠片もない部屋だった。ヤリ部屋ではないと言っていたけれど、そこかしこに爛れきった生活の名残が見えてるんだろうなと思っていたレオナルドは、そのがらんとした部屋には少々、驚きを隠せない。
真っ直ぐにソファーに向かい、その真ん中にどかりと座ったザップは、きょろきょろと部屋を見回すレオナルドにクイっと顎をしゃくってみせた。
「オラ、家主様に酒とってこいよ、陰毛頭」
「もう飲むんすか。まだ夕方にもなってないっすよ。それに、買い物は?」
「関係ねーだろ。オメーも今日の分の着替えくれー持ってんだろ?」
「それくらいなら、ありますけど。ああ、もう、分かりましたよ!」
甘い香水の匂い一つしない、うっすらと漂うのはザップのお気に入りの葉巻の香りだけの寂しい部屋に、少し居心地の悪い思いをしていたレオナルドは、ザップのなんともらしい言葉に呆れつつもほっとする。
ぶうぶうと文句を言ったのはポーズだけで、あっさりとキッチンへ向かったレオナルドは、開けた冷蔵庫の中にぎっしりと詰まった様々な種類の酒に、ワオと呟いて少し笑う。
全く見えなかったザップの生活の名残が、そこで初めて感じ取れて安心した。
「何飲むんすかー?」
「何でもいいぜ。オメーも飲めよ」
「えー、俺、そんな飲めねえっすけど。一応未成年だし」
「別にいいだろ、俺んちだし。家主様の言うことが聞けねーってのか」
「はいはい、じゃあちょっとだけ付き合いますよ」
酒の種類はよく分からない。だからザップがよく飲んでいる酒の瓶を二三本見繕い、ついでに自分用にと甘そうな缶の酒を一本。
申し訳程度に、数ピースだけあったチーズをつまみ用に取り出すと、両手に抱えてリビングまで戻る。
ザップの前に酒瓶を置けば、すぐに封を切ってぐびぐびと煽り始めた。一応探してみたものの、コップの類は見つからなかった。
またそんな飲み方をして、とぼやきつつ、ザップの隣に座ったレオナルドも、ぷしゅりと缶をあけて口をつける。
炭酸の強いそれは、淡いピーチの味がした。ライブラの打ち上げや新年会で何度か苦い酒を飲まされ、度数の強い酒が苦手になったレオナルドにも、比較的飲みやすい味だった。
「はっ、レオナルド君はお子ちゃまやのー。んなの、ジュースみてーなもんだろ」
「お子ちゃまで結構です。っつーか、アンタも飲むんでしょ、こういうの。冷蔵庫に入ってたんだし」
「飲まねーから残ってたんだよ。貰いもんだよ貰いもん」
「ふーん。つーか、あんだけ酒あんなら、わざわざ外で飲まなくてもいいじゃないですか。しかも俺の金使ってまで」
「ばーか。外で飲む酒と家で飲む酒はまたちげーんだよ」
なんとなくスイッチをオンにしたテレビから流れる音をバックミュージックに、いつも通り適当な話をしながら、酒を飲む。
最初に持ってきた瓶はあっという間に空になり、ちょうどタイミングよくレオナルドも缶を飲み切ったので、ザップに急かされて再びキッチンへ向かうべく立ち上がったら、少しだけ足元がよろついて、ザップに散々馬鹿にされて笑われた。
それで少々、むきになったのは確かだ。ザップ用の酒の他に自分用にとピックアップしたのは、瓶ビールと高級そうな酒、あとは念のためのさっきと同じ、桃の味の缶が一本。
にやにやと笑うザップに煽られるように、高級そうな酒に口をつければ、ほんの少しの液体が触れただけで、焼けるように舌がひりひりと痺れる。慌てて缶を開けて甘い味で希釈しようとしたけれど、かっと喉を焼いた強いアルコールの感触が、なかなか消えてはくれない。
そんなレオナルドの姿に、けたけたと声をあげて笑い転げるザップの反応に腹は立ったけれど、意地だけで飲めるようなものではないと理解したから、一口だけ減った瓶をそっとザップの方へと押しやってから、後はちびちびと甘い酒を啜るのに専念した。